認知症になると運転免許はどうなる?家族が知っておきたい基礎知識認知症の親に運転をやめさせるには、免許返納を迫る前に、免許の仕組みと返納後の生活の支え方を家族が知っておくことが近道です。「車に新しいこすり傷がある」「慣れた道で迷った」。親の運転に不安を感じても、「車がないと暮らせない」「まだ大丈夫だ」と言われると、それ以上は言い出しにくいものです。強く言えば親子げんかになり、黙っていれば事故が心配。多くのご家族が、この板ばさみの中で悩んでいます。この記事では、町田市・相模原市で訪問看護を提供する立場から、免許の制度、伝え方、手続き、返納後の暮らしの支え方を整理します。最初の一歩は、気づいた運転の変化をメモに残すこと。伝え方を先に知りたい方は、「免許返納を拒否する親への伝え方」の章から読んでも構いません。この記事でわかること認知症の診断や、認知機能検査で「おそれがある」と判定されたときの免許の扱い運転を続けるリスクと、事故のときに家族が問われうる責任返納を拒む親への伝え方と、家族だけで抱えない進め方自主返納の手続き、運転経歴証明書と特典返納後の移動手段と、外出の機会を減らさない工夫認知症と診断されると免許は取消しや停止の対象になる認知症と診断されると、運転免許は道路交通法にもとづいて取消しまたは停止の対象になります。ただし、診断を受けたその日に自動的に無効になるわけではありません。場面免許の扱い医師が認知症と診断した聴聞(処分の前に本人の言い分を聞く手続き)などを経て、取消しまたは停止になる医師の届け出認知症と判断した医師は、診察の結果を公安委員会に任意で届け出ることができる本人が運転をやめると決めた申請による取消し(自主返納)ができる警察庁も、医師の診断で認知症とされた場合は、聴聞などの手続きを経て免許の取消しまたは停止になると説明しています(出典:警察庁「認知機能検査について」)。医師が診察の結果を届け出る仕組みは、日本神経学会の診療ガイドラインでも取り上げられています。同ガイドラインが診断した医師に求めるのは、本人と家族へ運転について丁寧に説明し、一度きりで終わらせず、運転をやめたあとの暮らしも含めて関わり続けること(出典:日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」第5章 CQ5D-1)。認知症の疑いがあるのに受診していないなら、出発点は診断を受けることです。受診にはできれば家族も同席し、ふだん気づいた変化を伝えてください。75歳以上の認知機能検査と「おそれあり」と判定されたあとの流れ75歳以上の人は免許の更新前に認知機能検査を受け、「認知症のおそれがある」と判定されると医師の診断を受ける流れになります。段階内容対象免許の有効期間が満了する日に75歳以上の人受けられる時期更新期間が満了する日の6か月前から検査の結果「認知症のおそれがある」「認知症のおそれがない」の2区分「おそれがある」と判定された警察から連絡があり、臨時適性検査(公安委員会の求めで受ける医師の診断)か診断書の提出で医師の診断を受ける一定の違反をした75歳以上信号無視などの違反で、臨時認知機能検査(更新時と同じ検査を臨時に受けるもの)の対象になる検査の対象や時期、判定後の流れは、警察庁の案内にまとめられています(出典:警察庁「認知機能検査について」)。認知機能検査は、臨時に受けるものも含めて記憶力や判断力を確かめる簡易な検査で、認知症を確定させる診断ではありません。認知症かどうかを判断するのは、臨時適性検査などでの医師の診断です。「おそれがない」と判定されても、家族が気づいた運転の変化は主治医に伝えておくとよいでしょう。「おそれがある」と知らされた本人は、「取り上げられる」と強い不安や怒りを感じやすくなります。この時期は、運転の是非より先に気持ちを受け止めてください。更新の案内が届いたら家族も中身を確かめ、「次の更新をどうするか一緒に考えようか」と話題にしてみるのも一つの方法です。認知症の運転を放置するリスクと家族が問われる可能性のある責任運転を続けたままにしておくと、事故そのものに加えて家族が責任を問われる場面もあるため、免許返納の話し合いは早めに始めたいところです。運転に出やすい変化と家族が気づけるサイン認知症による運転の変化は、同乗したときや車を見たときに、家族が最初に気づくことが多いものです。気づきやすいサイン考えられる背景車体に新しいこすり傷やへこみが増えた車幅や距離の感覚が変わっている慣れた道で迷う、帰りが遅くなる道順を覚えておくことが難しい信号や一時停止を見落とす注意を向けられる範囲が狭くなっているアクセルとブレーキを踏み違えそうになるとっさの判断や操作が遅れている一つひとつは「年のせい」と見過ごしがちですが、重なっているなら注意が必要です。離れて暮らす場合は、帰省のたびに車の傷や走り方を確かめましょう。一人暮らしの親なら、認知症の一人暮らし、限界のサインと家族の対応で暮らし全体のサインも確かめられます。気づいた日と内容をメモに残すと、主治医に相談するときの材料になります。「なんとなく危ない」より「先月から左側に傷が二つ増えた」のほうが伝わります。本人は「ちょっとこすっただけ」と話を小さくしがちです。問いただすと隠すようになるため、「けががなくてよかった」と安全を気づかう言葉から始めてください。事故が起きたとき家族の責任はどう考えられるか家族だからという理由だけで事故の賠償責任を負うとは限りませんが、日ごろの関わり方によっては責任を問われることがあります。その考え方を示したのが、認知症の人が線路に立ち入り、列車にはねられた事故の裁判です。最高裁は、同居の配偶者というだけでは「監督義務者」にあたらないと判断しました。監督義務者とは、病気などで自分の行為の責任を負えない人が他人に損害を与えたとき、代わりに賠償する立場の人のこと(民法714条)。一方で、日ごろの関わり方から監督を実際に引き受けていたとみるべき特別な事情があれば、監督義務者に準じて責任を問われうるとも示しました。この事件では、妻と長男のどちらも責任を負わないとされています(出典:最高裁判所「損害賠償請求事件」平成28年3月1日第三小法廷判決)。列車事故の判決なので自動車事故にそのまま当てはまりませんが、家族の責任が一律ではないことを示しています。自動車事故では車の名義や保険の契約で扱いが変わる部分があるため、家族名義の車なら保険会社に確認しておきましょう。責任の有無は事故ごとに個別に判断されるので、不安なら弁護士などに相談してください。責任を恐れて家族が一人で見張り続ける必要はありません。危ないと気づいたら、主治医や相談窓口につないで周りと対策を進めましょう。免許返納を拒否する親への伝え方|説得がうまくいくコツ正論で免許返納を迫っても運転をやめさせるのは難しく、手放す寂しさを受け止めて、暮らしの困りごとから一緒に考えるほうが話は進みます。免許返納を拒む親の気持ちを知る返納を拒む言葉の裏には、多くの場合、不安や誇りといったもっともな気持ちがあります。親の言葉裏にある気持ち「まだ運転できる」衰えを認めたくない「車がないと買い物にも行けない」暮らしが立ち行かなくなる不安「人の世話にはなりたくない」家族に迷惑をかけたくない「年寄り扱いするな」役割や立場を奪われる悔しさ仕事や家族の送り迎えを担ってきた人にとって、車は移動の手段である以上に、自分の役割や誇りそのもの。本人には「できているのに、なぜ取り上げられるのか」と映りやすく、「危ないからやめて」という正論だけでは、否定されたように感じて意地になりがちです。拒否の言葉は、本人の不安や誇りを知る手がかりとして聞いてみてください。何が心配かが分かれば、代わりの手立ても考えやすくなります。強い拒否の理由を探って関わり方を変える考え方は、認知症の入浴拒否|お風呂を嫌がる理由と家族の対応・清拭の工夫でも紹介しています。運転をやめさせる伝え方のコツ|責めずに「暮らしの困りごと」から話す返納の話は、運転の腕前や病気を責めるのではなく、家族の心配と返納後の暮らしの話から始めると、本人も耳を傾けやすくなります。避けたい伝え方言い換えの例「もう危ないから免許を返して」「最近の運転で、少し心配なことがあって」「事故を起こしたらどうするの」「お父さんがけがをしたら、みんなが悲しむから」「認知症なんだから無理でしょ」「買い物や通院を楽にする方法を、一緒に考えたい」家族全員で取り囲む本人が信頼する一人が、落ち着いた場で話す話し始めは「あなたが心配」という家族の気持ちを主語にし、気づいた事実を短く伝えます。次に、「車がなくなったら困ること」を本人の口から挙げてもらいましょう。一つずつ代わりの方法を探していくと、話は前に進みやすくなります。話した内容を忘れることもあるため、一度で決着をつけず、落ち着いて繰り返す心づもりでいてください。免許の更新や車検など、区切りの時期を目安にすると、本人も心の準備ができます。本人が「自分で決めた」と感じられる形にすると、返納後の落ち込みも和らぐでしょう。家族は、決める手助けをする立場に回ります。家族だけで説得しない|主治医や安全運転相談窓口の力を借りる親子の話し合いが行き詰まったら、主治医や安全運転相談窓口など、家族以外の人に間に入ってもらいましょう。頼れる相手期待できること主治医診断の根拠をもとに、運転について説明してもらえる安全運転相談窓口(#8080)運転に不安のある高齢者や家族の相談に応じるケアマネジャー・地域包括支援センター返納後の生活の支えを一緒に考える訪問看護自宅での様子を見ながら、本人と家族の気持ちの整理を手伝う警察の安全運転相談窓口は、運転に不安がある高齢の運転者やその家族の相談を受けています。看護師など医療系の専門職員も対応する窓口です。全国共通の番号は#8080。受付は原則として平日の執務時間内です(出典:警察庁「安全運転相談窓口について」)。親は、子どもより医師や第三者の言葉なら素直に聞けることも少なくありません。家族は「取り上げる悪者」にならず、寄り添う側に回れます。主治医には、気づいた運転の変化をメモにして事前に渡しておきましょう。相談窓口は返納するか迷っている段階でも使え、家族だけで電話をして、返納の制度や支援について尋ねることもできます。周りの力を借りるのは、本人をだますことではありません。支える人たちが同じ方向を向くと、本人も安心して決めやすくなります。説得が行き詰まり、家族だけで抱えるのがつらいときは、精神科訪問看護ステーション ピースにもご相談ください。本人と家族の両方の気持ちに目を向けて、進め方を一緒に考えます。お問い合わせはこちら免許返納の手続きと運転経歴証明書などの特典返納の話がまとまったら、免許の返納と同時に運転経歴証明書も申請しておくと、身分証や特典に使えて暮らしの支えになります。免許返納(自主返納)の手続きと必要なもの免許の自主返納は、運転免許センターや警察署などで申請できます。東京都と神奈川県では、窓口や代理申請の条件が少し異なります。項目東京都(警視庁)神奈川県(神奈川県警察)申請できる場所府中・鮫洲・江東の運転免許試験場、運転免許更新センター、警察署運転免許センター、県内の警察署(横浜水上警察署を除く)主な持ち物運転免許証、申請用写真運転免許証、申請用写真1枚(運転免許センターでは不要)代理の申請委任状と代理人の本人確認書類で可能本人が窓口に行くのが難しい場合に限り可能東京都では、委任状と代理人の本人確認書類がそろえば、家族などの代理人が申請できます(出典:警視庁「運転免許証等の自主返納と同時に運転経歴証明書等の交付申請をする方」)。神奈川県は本人の申請が原則で、窓口に行くのが難しい場合に限って家族などの代理を受け付けています(出典:神奈川県警察「運転経歴証明書の申請手続について」)。代理で手続きする場合も、本人と話し合ったうえで委任状を書いてもらいましょう。気をつけたいのは、停止や取消しの処分中の人、処分の基準に当てはまる人などは自主返納できない点です(出典:警察庁「運転免許証の自主返納について」)。返納は、本人が自分で決められるうちに考えておきたいところです。受付時間や必要書類は、出かける前に各警察の案内で確かめてください。免許返納の日は、長年の運転に区切りをつける日でもあります。家族が窓口に付き添い、帰りに好きな店へ寄るなど、これまでの運転をねぎらう時間をつくると、気持ちの整理がしやすくなります。運転経歴証明書でできることと特典運転経歴証明書は、返納後も身分証として使え、提示すると買い物やタクシーなどの特典を受けられる書類です。項目内容申請できる期限返納または失効から5年以内手数料(東京都・神奈川県)運転経歴証明書のみ1,150円、マイナ経歴証明書のみ900円、両方1,250円身分証としての利用2012年4月1日以降に交付されたものは本人確認書類として使える特典の例タクシー乗車料金の割引、買い物の割引、自宅までの無料配送など期限を過ぎた人や、違反などで免許を取り消された人は交付を受けられません(出典:警察庁「運転免許証の自主返納について」)。手数料は東京都と神奈川県で同じ額で、両方を申し込んでも運転経歴証明書のみと100円しか変わりません(出典:警視庁「運転免許証等の自主返納と同時に運転経歴証明書等の交付申請をする方」、神奈川県警察「運転経歴証明書の申請手続について」)。マイナ経歴証明書は、マイナンバーカードと運転経歴証明書を一体化したもの。東京都では、運転経歴証明書を見せると、原則65歳以上の人が加盟企業・団体の特典を受けられます。マイナ経歴証明書についても、提示した人への特典付与が加盟企業・団体へ要請されています(出典:警視庁「高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧」)。神奈川県にも協賛事業所の特典制度があり(出典:神奈川県警察「神奈川県高齢者運転免許自主返納サポート」)、相模原市も65歳以上の人を対象に特典を案内しています(出典:相模原市「高齢者が運転免許を返納した場合の特典について知りたい。」)。特典は予告なく変わることがあるため、使う前に店へ確かめておくと安心です。よく使う店やタクシー会社が加盟していないか家族が先に調べておけば、返納後の楽しみにもつながります。免許返納後の代わりの移動手段|バス・タクシー・宅配・家族の送迎返納後も外出が途切れないよう、バスやタクシー、宅配、家族の送迎を組み合わせて、運転に代わる移動の手段を用意しておきます。返納すると認知症が進むのか|外出の機会を減らさないことが大切運転をやめると要介護や認知症のリスクが高まるという調査がありますが、その原因は生活の範囲が狭まることにあると考えられています。国立長寿医療研究センター予防老年学研究部の調査結果は、次のとおりです(出典:国立長寿医療研究センター「運転中止による弊害~運転を中止すると、要介護状態や認知症発症のリスクを高める~」)。調査でわかったこと家族が意識したいこと運転をやめた高齢者は、続けていた高齢者より要介護状態になる危険性が約8倍返納後も外出と活動の量を保つ運転をしていた高齢者は、していなかった高齢者より認知症のリスクが約4割低い運転に代わる役割や楽しみを用意する生活の範囲が狭まり、活動量が落ちることが原因と考えられている移動の手段と行き先をセットで考える大切なのは、返納後も外出と活動の量を保つこと。ただし同センターも、認知症の方や明らかに運転に問題がある方は免許を返納する必要があるとしています。運転はやめたうえで、外出の機会を守りましょう。趣味の集まりや買い物、通院など、車で行っていた行き先ごとに代わりの手段を決めておくと、本人の不安も和らぎます。返納の前に一度、バスやタクシーで出かけてみるのもよい練習になるでしょう。家にこもりがちなら、送迎のあるデイサービスなど通いの場も選択肢になります。地域の移動手段を組み合わせる|町田市・相模原市の例返納後の移動手段は、住んでいる地域のバスや福祉的な移送の制度を知っておくと、選択肢が広がります。移動手段町田市・相模原市での例コミュニティバス町田市の地域コミュニティバス、相模原市のコミュニティバス乗合タクシー相模原市では交通の不便な地域にコミュニティ交通として導入バスの乗車証東京都シルバーパス(都内に住む満70歳以上が対象)福祉的な移送町田市の福祉輸送サービス共同配車センター、福祉有償運送町田市の地域コミュニティバスは、地域住民と民間事業者、市の三者の協働で運行されています(出典:町田市「町田市地域コミュニティバス」)。相模原市は、鉄道や路線バスの利用が不便な地域に、コミュニティバスや乗合タクシーを導入しています(出典:相模原市「コミュニティ交通と『導入の手引き』について」)。東京都シルバーパスは町田市内などのバスで使えますが、都外の区間では使えません(出典:町田市「東京都シルバーパス」)。相模原市方面へ向かう路線では注意が必要です。町田市には、やまゆり号運行サービスや市民外出支援サービスを扱う共同配車センター、福祉有償運送といった福祉輸送の案内もあります(出典:町田市「福祉輸送」)。利用の条件や料金は制度ごとに違うため、ケアマネジャーなどと確かめましょう。買い物と通院は「運んでもらう」サービスも使う移動の手段を増やすだけでなく、品物を届けてもらう、自宅に来てもらう方法を組み合わせると、家族の負担も軽くなります。困りごと使える手立ての例食料品や日用品の買い物ネットスーパー、生協、店の配送サービス通院訪問介護の通院等乗降介助、家族の送迎、タクシー通院そのものが難しい訪問診療や訪問看護を検討する家族の送迎曜日と行き先を決めて、無理のない範囲で店で品物を選ぶ楽しみを残したいなら、行きはバス、帰りは配送という組み合わせもできます。通院については、「通院などを目的とした乗車・移送・降車の介助」を行う訪問介護の事業所もあります(出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? 訪問介護(ホームヘルプ)」)。使えるかはケアマネジャーに相談してください。家族の送迎は頼りになりますが、全部を引き受けると長続きしません。「火曜の通院は家族、金曜の買い物はバス」のように役割を決め、サービスと分け合いましょう。家族の我慢だけで支えない形にすることが、結果として本人の外出を長く守ります。精神科訪問看護師から見た、認知症の親の運転をめぐる家族の悩みと支え方運転をめぐる話し合いでは家族も傷つきやすいため、免許返納の前後を通じて、本人と家族の両方の気持ちを支える関わりが欠かせません。町田市・相模原市の訪問先で聞く家族の声町田市・相模原市で訪問看護を提供する中で、運転をめぐる悩みは、ご家族から繰り返し打ち明けられるテーマの一つです。家族からよく聞く声一緒に取り組んだこと「返納を切り出したら、口をきいてくれなくなった」話を急がず、まず本人の気持ちを聴く「鍵を隠したら、探し回って怒り出した」主治医と相談して進め方を見直す「返納してから、家にこもるようになった」歩いて行ける行き先や通いの場を探すこうした話は、体温や血圧を測ったあとの雑談や、帰り際の玄関先で出てくることがよくあります。丘陵地の住宅地では、最寄りのバス停まで坂道を歩くご家庭もあります。「車がないと暮らせない」という言葉は、決して大げさではありません。鍵を隠す、車を処分するといった強い手段は本人の混乱や怒りを招きやすいため、主治医やケアマネジャーと相談しながら進めてください。怒りが暴言や暴力につながるときは認知症の暴言・暴力で家族が限界を感じたときの対応と相談先も参考になります。夕方に「車で出かけなければ」と落ち着かなくなる方には、認知症の夕暮れ症候群・帰宅願望|家族が玄関で止めない対応のコツの関わり方も参考にしてください。家族もまた「親から大切なものを奪った」という罪悪感を抱えやすいものです。その気持ちを話せる相手がいることが、次の一歩の力になります。訪問看護が運転の問題でできること訪問看護は、本人の体調を見守りながら、運転を手放す本人と、説得に疲れた家族の両方の気持ちを支えることができます。訪問看護でできること家族にとっての意味症状や体調、服薬の確認運転に影響しそうな変化に早く気づける本人の気持ちを聴く手放す寂しさや不安を言葉にしてもらえる家族の相談を受ける説得の疲れや罪悪感を一人で抱えずにすむ主治医やケアマネジャーとの連携受診の相談やサービスの調整が進む訪問のたびに様子を見ていると、もの忘れの進み方や眠気の出やすい薬の影響など、運転に関わる変化に気づくことがあります。気づいたことは主治医に伝えます。家族の前では強がる本人も、第三者には「本当は運転が怖くなってきた」と漏らすことがあります。その本音を、本人が自分で決めるきっかけにつなげます。家族介護者への支援も、国内の診療ガイドラインで取り上げられているテーマです(出典:日本医療機能評価機構 ガイドラインライブラリ「認知症と軽度認知障害の人および家族介護者への支援・非薬物的介入ガイドライン2022」)。利用を考えるときは主治医かケアマネジャーに相談するか、ピースへ直接お問い合わせください。家族以外の相談先運転の問題は家族だけで結論を出そうとせず、主治医や地域の相談窓口など、話しやすいところから頼ってかまいません。町田市では、高齢者支援センターが地域包括支援センターの役割を担い、認知症の相談にも応じています(出典:町田市「高齢者支援センター(地域包括支援センター)」)。相模原市でも、地域包括支援センターが高齢者の健康、福祉、介護の相談を受けています(出典:相模原市「地域包括支援センター(高齢者の健康、福祉、介護の相談・支援)」)。返納後の暮らしの相談先に迷ったら、まず地域包括支援センターに電話してみてください。地域の支えの仕組みは町田市で認知症の家族を支えるには?訪問看護と見守り支援を徹底ガイドで詳しく紹介しています。車の売却などお金の管理も気になるときは、認知症とお金の管理:家族が知っておくべき対策とポイントもご覧ください。よくある質問|認知症の親の運転と免許返納について運転と免許返納について、ご家族からよく寄せられる質問にお答えします。Q1. 認知症と診断されたら、運転免許は自動的に取り消されますか?自動的には取り消されず、聴聞などの手続きを経て取消しまたは停止になります。診断を受けたら運転はやめ、主治医と今後を話し合いましょう。Q2. 認知機能検査で「認知症のおそれがある」と判定されたら、どうなりますか?警察から連絡があり、臨時適性検査か診断書の提出で医師の診断を受けます。認知症と診断されると、免許の取消しまたは停止になります。Q3. 免許返納を拒否する親に運転をやめさせるには、どうすればいいですか?正論で迫らず、まず手放す寂しさや不安を聴いてください。主治医や安全運転相談窓口(#8080)の力を借り、返納後の暮らしを一緒に考えましょう。Q4. 免許を返納すると認知症が進むというのは本当ですか?運転をやめると要介護や認知症のリスクが高まるという調査はありますが、原因は生活の範囲が狭まり活動が減ることと考えられています。代わりの移動手段と外出の機会を用意しましょう。Q5. 認知症の親が事故を起こしたら、家族も賠償責任を負いますか?家族というだけで必ず負うわけではありませんが、日ごろの関わり方によっては責任を問われることがあります。保険会社や弁護士に確認してください。Q6. 運転経歴証明書にはどんな特典がありますか?本人確認書類として使えるほか、提示するとタクシーや買い物の割引、配送の無料などを受けられる店があります。申請は返納から5年以内です。Q7. 免許返納後の移動手段には、どんなものがありますか?コミュニティバス、乗合タクシー、タクシー、福祉的な移送のほか、宅配や家族の送迎もあります。地域の制度は地域包括支援センターで確認できます。Q8. 家族以外に、運転のことを相談できるところはありますか?主治医、安全運転相談窓口(#8080)、地域包括支援センター、ケアマネジャー、訪問看護に相談できます。まとめ|『取り上げる』のではなく『生活を組み替える』視点で認知症の親に運転をやめさせるときに大切なのは、免許返納で取り上げることではなく、運転に頼らない暮らしへ組み替えることです。拒否の裏にある不安や誇りを受け止め、第三者の力を借りて、本人が自分で決められるよう支えましょう。返納後は移動手段を組み合わせ、外出の機会を守ります。最初の一歩は、気づいた運転の変化をメモに書き出し、次の受診で主治医に見せること。家族だけで抱えきれないときは、ピースにもご相談ください。精神科訪問看護ステーション ピースにご相談ください「精神科」の名前ですが、認知症の方の気持ちの変化や、介護するご家族の悩みのご相談も受けています。こんな方はぜひご相談ください:認知症の親に運転をやめてほしいが、どう切り出せばよいかわからない方免許返納をめぐって親子関係がぎくしゃくし、疲れている方返納後、家にこもりがちになった親の様子が心配な方ご相談の受け方は、次のとおりです。ご相談について:説得がうまくいかない、鍵を隠してしまったなど、話しにくい内容もそのままお聞かせください訪問看護を使うか決めていない段階のご相談でも構いません主治医やケアマネジャーとの調整もご案内します東京都町田市・多摩市、神奈川県相模原市・大和市・川崎市麻生区を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事認知症の夕暮れ症候群・帰宅願望|家族が玄関で止めない対応のコツ認知症の入浴拒否|お風呂を嫌がる理由と家族の対応・清拭の工夫認知症の暴言・暴力で家族が限界を感じたときの対応と相談先町田市で認知症の家族を支えるには?訪問看護と見守り支援を徹底ガイド参考文献一覧出典:日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」第5章 CQ5D-1https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_05.pdf出典:日本医療機能評価機構 ガイドラインライブラリ「認知症と軽度認知障害の人および家族介護者への支援・非薬物的介入ガイドライン2022」https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00762/出典:警察庁「認知機能検査について」https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninchi.html出典:警察庁「運転免許証の自主返納について」https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/jishuhennou.html出典:警察庁「安全運転相談窓口について」https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/conferennce_out_line.html出典:警視庁「運転免許証等の自主返納と同時に運転経歴証明書等の交付申請をする方」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/koshin/jisyu_hennou/henno_kofu.html出典:警視庁「高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/koreisha/shomeisho/support.html出典:神奈川県警察「運転経歴証明書の申請手続について」https://www.police.pref.kanagawa.jp/tetsuzuki/menkyo/mes83150.html出典:神奈川県警察「神奈川県高齢者運転免許自主返納サポート」https://www.police.pref.kanagawa.jp/kotsu/jiko_boshi/koreisha/mesf0224.html出典:最高裁判所「損害賠償請求事件」平成28年3月1日第三小法廷判決https://www.courts.go.jp/hanrei/85714/detail2/index.html出典:国立長寿医療研究センター「運転中止による弊害~運転を中止すると、要介護状態や認知症発症のリスクを高める~」https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/gerontology/gold/about/page2.html出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? 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ピースについて】株式会社isLandは町田市で訪問看護を運営する3つの事業所を持ち、これまでも精神疾患のある方とそのご家族を多数支援してきました。2027年1月には、その経験を基に、精神科に特化した「精神科訪問看護ステーション ピース」を新たに開設します。開設までの期間も、既存3事業所でご相談・受入対応が可能です。お気軽にお寄せください。mental.island-piece.jp 精神科訪問看護ステーション ピース|町田市