「給与明細に『介護保険料』って出てきたけど、どういう仕組み?」「65歳を迎えると保険料が変わるって本当?」2025年度(令和7年度)、協会けんぽの介護保険料率は1.59%に改定されました。この記事では、全国の市民の方が“自分ごと”として理解できるように、介護保険料の仕組みと生活への影響をわかりやすく解説します。1. 介護保険料とは?制度の全体像1-1. 制度の目的介護保険制度は2000年に始まりました。目的は、「介護が必要になったとき、誰でも安心してサービスを利用できる社会をつくる」ことです。費用は税金だけでは賄えないため、40歳以上の国民みんなが「介護保険料」として負担しています。1-2. 誰が対象なの?第2号被保険者(40~64歳)会社員、公務員、自営業など、医療保険に入っている40~64歳の人。第1号被保険者(65歳以上)全国すべての65歳以上の人。1-3. なぜ40歳から?40歳を過ぎると、脳血管疾患・認知症・骨折・がんなど、介護が必要になるリスクが高まります。特に「特定疾病(16種類)」と呼ばれる病気が増え始めるのがこの年代です。1-4. なぜ65歳で仕組みが変わる?65歳以上になると、病気の原因を問わず介護サービスを使えるようになるため、保険料の仕組みも「全国一律の料率制」から「市区町村ごとの定額制」に切り替わります。2. 40~64歳(第2号被保険者):料率制の仕組み第2号の人は、給与や賞与に対して「介護保険料率」をかけて計算します。2025年度の協会けんぽの料率は1.59%です。2-1. 協会けんぽ(全国一律)料率:1.59%(令和7年3月分~)会社と本人が半分ずつ負担(労使折半)給与とボーナスの両方にかかる賞与は「標準賞与額×1.59%」、年間累計上限は573万円まで2-2. 健康保険組合各組合ごとに料率が異なる平均では1.74%程度(2025年度予測)2-3. 国民健康保険(自営業)国保と介護を一緒に計算世帯単位で賦課、所得や人数によって金額が変わる2-4. 給与明細の見方と開始時期項目内容チェックポイント健康保険料医療保険分40歳未満はここだけ介護保険料40歳から加わる満40歳の属する月分から発生(給与控除は翌月になることも)厚生年金保険料年金分将来の年金に直結👉 ポイント:制度上は「満40歳に達した日の前日の属する月」から第2号となります。ただし給与明細への反映は会社の処理により翌月控除になる場合があります。3. 65歳以上(第1号被保険者):定額制の仕組み65歳以上は「料率制」ではなく、市区町村ごとの「基準額」をもとに定額制で計算します。3-1. 基準額と所得段階市区町村が「基準額」を設定所得に応じて標準13段階(第9期:令和6~8年度)に分かれる全国加重平均の基準額は月6,225円(参考値)3-2. 徴収方法年金からの天引き(特別徴収)が基本年額18万円未満の年金受給者などは納付書や口座振替(普通徴収)3-3. 注意ポイント市区町村によって基準額が違う3年ごとに見直し低所得者には軽減措置あり4. 40歳から65歳の切り替え年齢負担の仕組み支払い方法ポイント40歳給与×料率(1.59%)給与天引き誕生日の属する月分から発生64歳同上同上ボーナスにもかかる65歳基準額×所得段階(13段階制)年金天引き市区町村が通知📌 扶養に入っていた配偶者も、65歳になった時点で保険料が発生します。5. 自己負担割合の仕組み介護サービスを実際に使うときの自己負担割合は次のとおり。区分自己負担割合判定基準の目安第2号(40~64歳)原則1割所得にかかわらず一律第1号(65歳以上)1割合計所得金額160万円未満 等同(65歳以上)2割合計所得金額160万円以上 かつ 世帯の年金収入+合計所得=単身280万円以上/夫婦346万円以上同(65歳以上)3割合計所得金額220万円以上 かつ 世帯の年金収入+合計所得=単身340万円以上/夫婦463万円以上👉 注意:2割・3割は本人の所得条件+世帯の収入基準の両方を満たした場合に適用されます。6. よくある誤解(Q&A)Q1:40歳になったらすぐ引かれる?A:満40歳に達した月分から介護保険料がかかります。給与明細での控除は翌月になることもあります。Q2:専業主婦は?A:40~64歳までは負担なし。ただし65歳から市区町村で徴収開始。Q3:被扶養配偶者も負担する?A:協会けんぽには被扶養者に介護保険料をかける「特定被保険者制度」はありません。ただし一部の健康保険組合には制度があるため、自分の保険者の規約を確認しましょう。Q4:ボーナスにもかかる?A:はい。標準賞与額に1.59%をかけ、労使折半します。Q5:退職したら?A:会社員→国保に切り替え。任意継続という方法もあります。7. 家計にどのくらい影響する?シミュレーションケース1:年収400万円(会社員)月収30万円 → 約2,400円/月年間29,000円(本人負担)ケース2:夫婦共働き(600万円+300万円)世帯合計 → 約70,000円/年(本人負担)ケース3:65歳夫婦(年金15万円×2)基準額6,225円(全国平均) → 夫婦で12,450円/月8. 背景にある高齢化と制度改正日本は世界でもっとも高齢化が進んでいる国の一つ介護給付費は年々増加料率は毎年、基準額は3年ごとに改定👉 制度は「負担と給付のバランス」で動いています。まとめ介護保険料は、40歳からは給与やボーナスに料率をかける方式(第2号、1.59%)65歳からは市区町村が定める基準額で定額方式(第1号、標準13段階)という2つの仕組みで決まります。「給与明細」「年金通知」「市区町村からの案内」を確認し、ライフステージごとに備えておきましょう。関連記事訪問看護における緊急時訪問看護加算とは?制度の理解と実務での対応ポイント訪問看護の【初回加算】完全ガイド、算定要件・点数・注意点を徹底解説【2025年対応】訪問看護における退院時共同指導加算とは?算定要件や注意点を解説 参考文献一覧全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/1995-298/全国健康保険協会「令和7年度保険料率のお知らせ」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/LP/2025hokenryou/健康保険組合連合会「令和7年度 予算早期集計」https://www.kenporen.com/include/data/press/2025/202503yosan.pdf厚生労働省「第9期における第1号保険料等」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001364995.pdf厚生労働省「給付と負担について」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001119101.pdf厚生労働省「介護保険制度について(2号リーフレット)」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf生命保険文化センター「公的介護保険への加入はいつから?」https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/8808.html本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。